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周来友エッセイ「ある植木職人の話」 

「ある植木職人の話」

 留学生時代、私は練馬区の光が丘団地に近い、ある日本人の家で一年間下宿していた。公立中学校で英語教師をしているその庭付き一軒家の女主人は、休みになるとよく一人旅をしており、その年のゴールデンウイークも一週間のオーストラリア語学旅行に出か

周来友エッセイ「向日葵」

「向 日 葵」

 大学の卒業旅行で北海道を一周した。旅の仲間は総勢5人。実家が札幌の日本人クラスメイトが運転する自家用ワゴンで旅はスタートした。先ずは道南から道東、そして道北へ。北海道を反時計回りに巡る旅は順調に進んだ。そして最北端の稚内から札幌に戻るという旅の終盤、車を出してくれたクラスメイトが私に日本一のひまわり畑を案内するという。まっすぐに続く旭川市郊外の国道で彼は車を東に向けた。

周来友エッセイ「床屋の思い出」

「床屋の思い出」

 自慢話でもないが、私は50歳を過ぎても髪の毛はまだふさふさ。髪質は硬く伸びが速いため、月一のペースで切らないと髪の毛はぼうぼうとなってしまう。テレビ番組に出るようになってからは、スタジオに入る前いつも局のメイクアーティストにメイクアップと一緒にヘアスタイルも整えてもらっている。普段はと言うと、月末に長年親しくしている美容師が面倒を見てくれるので、彼

周来友エッセイ「月はどっちに出ている」

「月はどっちに出ている」

 「思い違いじゃなければ、この角に交番がなかったっけ?」 五分程走っていたタクシーが路地裏からようやく、大通りに出ようとする時、運転手は突然不思議そうな口調で客の私に聞いた。 前日の夕方から、中国語の翻訳と編集の立会いで、ずっと某テレビ局の編集室にこもっていた私は、作業が終わった朝の三時頃、局の裏口の前で待機していたタクシーに乗り込

周来友エッセイ「ふみの日の出来事」

「ふみの日の出来事」

 携帯電話がまだ市販される前の話である。ある炎天下の昼下り、西新宿の高層ビル街の隙間に広がる空には、雲ひとつなかった。赤信号に待たされた私は、照りつける真夏の日差しから逃げるため、街路樹の陰に身を隠したが、隠しながらも頻りに汗をかいた。 「お兄さん、お兄さん、ちょっと…」 突然、後ろから聞き慣れぬ声が私を呼んでいる気が

周来友エッセイ「ジャパニーズドリーム」

「ジャパニーズドリーム」

 エスニック色豊かな新大久保の駅前に『CASA』というコミュニティレストランがある。そこに来る客の七~八割は外国人で、特に中国人や韓国人といったアジアの人々が目立つ。交通の便が良いことも手伝って、私はしばしばそこを待ち合わせ場所として利用している。ある平日の午後、入り口に近い禁煙席に着いて、私はドリンクの飲み放題を注文し、ティ

周来友エッセイ「プラットホームの風景」

「プラットホームの風景」

 まだ肌寒い三月末のある日、通勤ラッシュが終わった午前十時頃、新宿駅京王線のホームで電車を待っていた。調布に住んでいる友人と会うため、急行に乗ろうとしていた。先ほど、エスカレーターの手前で見かけた、中年の女性と若い男性が大きな箱を二人がかりで抱えながら降りて来るのが見えた。十数年もこの国際大都市で養った目で、何となくその二人が

周来友エッセイ「焼き芋」

「焼き芋」

 その日、午前中に川崎地検の通訳の仕事が終わり、いよいよお待ちかねのランチタイム。午後は地検の反対側にある地裁の仕事である。それが頗る遅く、三時過ぎにならないと始まらないので、ゆっくりとお昼を楽しむ時間が充分にある。天気も良いし、今日は川崎駅まで戻り、近くの「ラ・チッタデッラ」とかいうアミューズメント・センターで、洒落たイタリア料理で